トラウマからの歩き方

トラウマからの回復を支えるグラウンディング:心身の安定を取り戻す具体的な方法と支援者の役割・セルフケア

Tags: トラウマ回復, レジリエンス, グラウンディング, セルフケア, 支援

大切な方がトラウマによる心身の不安定さで苦しんでいるとき、どのように寄り添えば良いのか、ご自身の不安や負担をどうケアすれば良いのか、お悩みになることがあるかもしれません。心身の安定を取り戻すための具体的なアプローチの一つに、「グラウンディング」があります。これは、トラウマからの回復過程で、レジリエンスを高めるために有効な方法と考えられています。

グラウンディングとは何か

グラウンディング(Grounding)とは、「今、ここ」の現実世界に意識を集中させることで、不安定になった心や体を落ち着かせるための技法です。「地に足をつける」という言葉のように、解離(現実感が薄れること)や強い不安、フラッシュバックといったトラウマ反応によって引き起こされる心身の混乱から抜け出し、現在の安全な状況に意識を戻すことを目的としています。

トラウマ体験は、過去の出来事であるにも関わらず、まるで今起きているかのように感じられたり、体や心に強い反応を引き起こしたりすることがあります。グラウンディングは、こうした圧倒されるような感覚から一時的に距離を置き、現在の安定した自分自身と周囲の環境に意識を戻す手助けとなります。これは、感情の波に飲み込まれそうになったり、過去の記憶に囚われたりしやすい状況において、自己調整能力を高めるレジリエンス因子の一つとして機能します。

トラウマからの回復におけるグラウンディングの効果

グラウンディングを実践することで、トラウマからの回復においていくつかの肯定的な効果が期待できます。

これらの効果は、レジリエンス因子である「自己調整能力」や「身体感覚への気づき」、「感情調整スキル」を育むことにつながり、トラウマからの回復の道のりを支える力となります。

具体的なグラウンディングの方法

グラウンディングには様々な方法がありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。大切な方にご提案する際や、ご自身のセルフケアとして実践する際のご参考にしてください。

1. 身体感覚に意識を向ける

2. 五感を使う

これらの五感を使う方法の組み合わせとして、「5-4-3-2-1メソッド」があります。見えるものを5つ、触れるものを4つ、聞こえるものを3つ、嗅げるものを2つ、味わえるものを1つ、順番に見つけながら意識を集中させる方法です。

3. 動きを取り入れる

4. 安全な場所をイメージする

心の中で、自分が完全にリラックスでき、安全だと感じられる場所(実際の場所でも想像上の場所でも良い)を詳細にイメージします。その場所の色、音、匂い、触感などを具体的に思い描くことで、心地よさと安心感を得ることができます。

大切な人へのグラウンディングの提案とサポート

大切な方がグラウンディングを試みる際に、支援者としてどのように関われば良いでしょうか。

支援者のためのグラウンディングとセルフケア

大切な人をサポートする過程で、支援者ご自身も精神的な負担を感じたり、共感疲労を経験したりすることがあります。支援者が自身の心身の安定を保つことは、サポートを継続するためにも不可欠です。グラウンディングは、支援者自身のセルフケアとしても非常に有効なツールです。

支援者がご自身の心身をケアし、安定を保つことは、大切な方へのサポートの質を高めることにもつながります。ご自身のレジリエンスを高めるためにも、グラウンディングをセルフケアのツールとして活用されてください。

まとめ

グラウンディングは、トラウマからの回復過程において、心身の安定を取り戻し、レジリエンスを高めるための具体的な方法です。大切な方が不安定な状態にある時に安心感を与える手助けとなるだけでなく、支援者自身のセルフケアとしても非常に有効です。

グラウンディングを実践する際には、無理なく、ご自身や大切な方に合った方法を見つけることが大切です。焦らず、小さな一歩から試してみてください。心身の安定を取り戻すことは、回復への道を歩む上で重要な基盤となります。必要に応じて専門家のサポートも活用しながら、穏やかな歩みを続けていくことを願っております。